2011年6月29日水曜日

第11回 山小屋への携行品(遊び道具編)


 今日の写真は、2009年に、黒部五郎小舎にいたときに、黒部川本流で釣った岩魚の写真です。小屋から、黒部川本流までは、特に危ないところもなく、ゴロー沢を下っていって、約一時間程度。ゴロー沢は数年前に鉄砲水があったとかで、流木が多くちょっと荒れた感じでしたけど、本流にぶつかる、ちょっと手前から魚影もちらほら見られました。


 黒部源流部での釣りというと、薬師沢小屋へ泊まって、目の前を流れる本流か、薬師沢でっていうのが、一般的です。フライロッドをザックの脇にさして登って来る釣り人の数はそれほどは多くはないですが、魚はすこしスレ気味ですかね。まあ、それでも、大物がばしばし釣れてしまうのが、黒部源流のすごいところなのですが。



 それに比べると、黒部五郎小舎近辺の黒部川源流部や、高天原山荘の近くを流れる岩苔小谷は、釣り人もまずこないですし、川を独り占めできます。魚影も濃いし、魚もスレていません。天気のいい日に、川の音につつまれながら、清流で過ごす一日は、まさに「日本の夏休み!」という感じで至福の時間です。黒部源流でイワナ釣りっていうと、なんかとても難しい感じがするかもしれませんが、これだけ魚が豊富で釣りやすい川も全国探してもまずないとおもいますので、興味がある方は、ぜひチャレンジしてみるといいですよ。問題は、たどり着ける脚力だけです。ただし、キャッチ&リリースは必ず守ってくださいね。ずっと、フライロッドを持って行っていたのですけど、昨年からよりシンプルにということで、テンカラ竿にしました。


  僕の場合、持っていく毛鉤はアント(蟻)と、ビートル(コガネムシ)、アダムスのパラシュートと、イブニングライズ用のホワイトウルフの4種類だけ。これで、十分釣りになります。サイズは14-16番でOKです。恐らく、これだけの高山で、小屋で働きながらフライフィッシングを楽しめるのは、黒部源流域だけじゃないかな?これも、僕が黒部から離れられない大きな理由の一つです。

 ■ 山小屋に持って行く物(遊び道具編)

  
   山小屋で一夏過ごす場合、たまの休暇や休み時間に何をするかというのは、人様々なのですが最繁期に近づいてきて忙しくなってくると、疲れもたまってきて、結局、休み時間もお昼寝(笑)な、感じになっちゃうのですが、僕はせっかく山に来てるのに、寝て過ごすのはもったいないなあ~っと思ってしまうタイプで、そのために、時間の空いた時用に遊び道具をいくつか持っていっています。それはなにかというと・・・
 

*釣り道具

   前述のように、黒部源流域は、格好の岩魚釣り場なので、フライロッドを持って行きます。フライの竿というのは、通常、持ち運びのために、2-3分割できるように作られているのですが、それでもそれなりの長さになります。薬師沢小屋のように、目の前が川ならそれでもいいのですが、川まで少し歩かないといけないような場合、サブザックに釣り道具一式と、お弁当を入れて、気軽に山道や沢を歩くのに、仕舞寸法の短くなるパックロッドやテンカラ竿が便利です。特にテンカラだと、持ち物はロッドとチペット(ハリス)、フロータント(ドライとジェル)、クリップ、フライボックスくらいでしょうか。ウエアは特に持っていかず、登山用タイツに短パン、足元は小屋においてある沢靴ですませてしまいます。昨年の装備はこんな感じです。

今年の持ち物 釣具編

 *カメラ

  釣りや、登山にはいけない、ちょっとした休憩時間なんかは、もっぱらカメラをぶら下げて散歩をしています。もちろん、山も被写体ですけど、登山道脇の植物やら、よくよく観察すると、様々な被写体が見つかって、撮っていてとても楽しいです。だいたい一夏で5百枚位撮りためておいて、山から降りてから、じっくり整理。以前は山の写真のブログを運営してましたが、今はこちらにアップするくらいになってしまいました。ちょっと撮る写真の方向性も変わってしまったのかなあ。レンズは何本も持っていくわけにもいかないので、広角ズームと、マクロレンズ、望遠ズームの3本が基本。人を撮るのが好きな人は、大きな一眼よりも、コンパクトなタイプで写りに定評があるものを常にポケットにいれておいたほうが、シャッターチャンスを逃さないでいいかと思います。そうそう、頻繁に散歩をしてれば、雷鳥に出会う可能性もアップ。とくに、霧がでているときは、警戒心が薄れるのか、よく登山道に出てきます。しかし、今まではずっと、デジタルの一眼レフを持って行っていたのですが、2013年の高天原では、ニコンのミラーレス機とレンズ二本だけを持っていきました。これだと、機材の重量が一キロ程度で済みます。前述の一眼一式だと3キロ以上になるので、これも重量が3分の一程度で済みます。。でも、画質重視の場合はやはり、一眼をもっていきますね。さらに2014年は、富士フィルムのミラーレス一眼に、撮影機材はこんな感じになってます。


撮影機材一新

*パソコン(iPad)

 前は、ノートパソコン(パナソニックのレッツノートRシリーズ)を持って行っていたのですが、べつに本格的にパソコンで作業しようというわけではなく、お休みだけど、外は雨・・・なんっていう時に音楽を聞いたり、映画を見たり、本や漫画をみたり、日記や思いついた仕事上のアイディアなんかを書き留めたりという使い方です。なので、最近はノートパソコンの代わりにタブレット端末を持っていくようになり、重量もノートパソコンの3分の一以下と軽量化。タブレットは電池が10時間くらいもつので、あまり頻繁に充電をしなくて済むのがいいです。ケースごとジプロックに入れてザックの背中のパッド部分のポケットにいれて持って行ってます。ここだと、金属のフレームが守ってくれるので、変な応力もかからなくて安心です。


  僕の場合はざっとこんな感じです。あと、だいたいどこの小屋にも大きめの本棚があって、バイトや、お客さんが読み終わって置いていった本が結構な冊数置いてあります。普段自分では読まないタイプの本も多く、のんびり読書三昧もまた楽しいものです。あと、変わったところでは、凧もってきて、凧上げしてるやつもいたっけな~。

2011年6月13日月曜日

第10回 山小屋への携行品(生活用品編)


 

このコラムもなんとか今回で10回目。


■ 荷揚げ


   そうそう、南アルプスの鳳凰小屋にはヘリコプターの荷揚げのお手伝いだけに行くこともあります。ヘリは、お天気がいまいちだと、天候回復を待って、待機が続き、フライトがずるずると延びてしまって、なかなか荷物が届かないことが山ではよくあります。とくに昨年は雨ばかりで、一週間もフライトが伸びて、兵糧攻めにあいましたw 霧がかかって視界が悪いと飛べないので、どこの小屋でも、荷揚げの当日はピリピリ緊張ムード、無線でヘリポートと視界の情報をやりとりしなら、ガスが切れた瞬間に一気に物資を運びます。普通は、小屋の近くの開けた場所に荷物を落としてもらい、バイトも総出で小屋の中に運びます。また、すぐ次の便が飛んでくるので、大忙しです。

 そういえば、数年前に、どこかの山域で、荷物をかけるフックがちゃんと締まっていなくて、荷物を間違って落下させたとかで、荷物の脱着の方法が少し変わり、簡単な講習を受けたことがあったっけ。

 下の写真は高天ヶ原山荘でのヘリの荷揚げの様子。緊張して待っていると、パタパタパタっと、ヘリがやってきて、小屋前の小さなデッキに荷物を落していきます。たいてい一発では終わらないので、急いで荷物をほどき小屋の中へ運び込んでいたのですが、2年前から小屋裏に大きなスペースができ、そこに5発くらいは落としていけるので、あとでのんびり運べるため、だいぶ楽になりました。

■ 小屋への携行品について

 前回の続きです、小屋へ持っていく物についてすこし説明をしようと思います。小屋によっては、持ち物チェックリストみたいなのを送ってくるところもありますが、電話で「ヘッドランプと雨具だけは忘れないでくださいねーっ」と、言われるだけのところもあるので、簡単に説明しておきましょう。といっても、着替えや、洗面用品等は、普通の旅行とかわらないので、各自、必要な物を必要な量持っていけばいいと思います。たいていどこの小屋にも、お風呂に入れるのは週2回程度です(高天ヶ原は毎日ですがw)。洗濯はできても、やはり週2-3回くらいですので、アンダーウエア等の基本的な着替えとしては、3セットくらいは必要となります。上に着るものは、2セットでも、かわりばんこに選択すれば、なんとかやりくりできるかな。乾燥室が使えればいいのですが、そうでないと、お天気が悪いとなかなか洗濯物も乾いてくれないので、登山用品の速乾性のある物で揃えていくといいと思います。その他、必需品というと・・・


*ヘッドランプ:

 朝は暗いうちから働きだすので、これなしでは、仕事になりません、必需品です。最近は蓄電池に充電しておいて、厨房だけは朝から、電気照明がつくところも多いですが、倉庫に材料をとりにいったり、やはり手元が暗かったりするので、どうしても必要になります。安物はスイッチがすぐ壊れたりするので、それなりの物を買っておいたほうがいいかと思います。下界でも災害時にも使えますし、登山でも、必ず持っていくものなので、いいものを買っておきましょう。今だと、PETZLかBlackdiamondのものを使ってる人が多いかな。電池は意外とすぐなくなります。僕なんかは、寝る前に本を読んでいて、点けたままにして寝てしまって、朝に電池きれてたり(笑)。一週間に電池ワンセットくらいのつもりで準備していくと安心です。でも、最近は電池は単4のエネループを3セットと充電器を持って行っています。男性はひげそり用の充電池も必要ですね。


*充電器具:

 携帯は小屋での目覚まし時計がわりでもあるので、そのための充電器具も必要となります。私の場合は、目覚ましには、タブレット端末を使っていますので、その充電器と、カメラの電池用の充電器を持っていっています。それと上記のエネループ用充電器。あと、小屋はコンセントの数が少ないうえに、みんなが充電しますので、コンセントの口が三つ付いた延長コードも持って行っています。一人でコンセントを独占してしまっては申し訳ないですからね。他の人にも喜ばれますし。

*エプロン&頭巾:

 厨房に入るときはエプロンと頭巾が必須。保健所の人もチェックに来たりします。たいてい小屋に昔のがたくさん残っていて、すきなの使っていいよと言われますけど、デザイン的にこだわる人は、自分で用意していったほうがいいでしょう。ちなみに、太郎平グループの小屋は、タイアップしているマムートのエプロンで、おそろいです。

*サンダル:

   室内履き用のサンダルも必需品。厨房の床は濡れてますし、山小屋は足元から冷えてきますので、靴下やスリッパでの生活はできません。掃除の時など、畳の部屋では脱いで作業しますから、着脱のしやすいものが使いやすいです。私はアディダスのウオーターモカシンをサンダル代わりに持って行っています。サンダルよりも動きが軽快になるので、脱ぎやすいシューズタイプもお勧めです。つっかけのサンダルでは重い物とか運びにくいですしね。

*防寒具:

   前にも書いたけど、普段はフリースくらいで十分なのですが、たまに冷え込んだ時や、夜に外で宴会をしたり、流れ星を眺めたりする時のために、薄手のダウンもあると快適に過ごせます。ダウンや化繊のベストも、厨房仕事で、料理や洗い物をするときに袖を濡らすこともなく、使い勝手がよいです。夏といっても、標高の高いところは夜は氷点下ちかくまで気温が下がりますので、要注意です。足も冷えるので、ウールのしっかりした靴下がよいですよ。

   といった感じでしょうか。ほかにも気づいたことがあったら、順次書き加える予定です。あれもこれもと思っても、意外と山では使わないもので、一ヶ月なんかあっという間なので、荷物は割りきって、コンパクトにまとめるのが吉です。あ、そうそう衣類に関しては今年の私の持ち物も参考になさってください。)
今年の持ち物 衣類編


   今日の写真は、鳳凰小屋の炬燵で、みんなでまったりとしているところ。このときの荷揚げでは、待機が長かったせいもあって、毎晩飲み過ぎてしまって、荷物運びがきつかった(笑)これは、そろそろ若い人におまかせですね そうそう、この年(2011年)は下山してすぐの、6/6に池袋の豊島公会堂で、山岳映画の上映会があって、鳳凰小屋に関する記録映画もその一つとして上映されました。前年に一年かけて撮っていたらしく、興味深く見させていただきました。オーナーの細田さんもやってきて、舞台挨拶していました。なんでも、山岳映画サロンという、アマチュア映像作家の団体だそうで、毎年、上映会を開いているらしい。公会堂がほぼ一杯になる盛況ぶり、来年も行ってみようとおもう。しかし、製作者が「モデル」と呼んでいたいわゆる女性出演者がこぞってただのおばちゃまだったのにはちょっと苦笑い。まあ、会場を見渡せば、納得な年齢層だったのですけど。