2011年7月11日月曜日

第12回 大きな小屋・小さな小屋



   この写真は2010年の高天原山荘の写真。しかも、お客さんは見る機会のない裏側のファザード。裏にあるのは、いわゆる「こえだめ」と焼却炉。いわば山小屋での汚れ仕事の場なので、お客さんは入れないようになっています。一転、正面側はデッキになっていて、お客さんの憩いの場。今回は、この高天原での生活をちょっと振り返ってみようかと思います。

 もともとこの小屋は大東鉱山という会社のタングステンの採掘&精製のための作業小屋だったのですが、50年も前にこんな山奥でタングステンを掘っていたなんってちょっと驚きです。こんな山奥にタングステンがあるなんて、誰が見つけたのやら。もともと太郎平も、金の採掘調査のために開かれたらしいし(結局、金はみつからなかったらしいですが)ので、そういう山師っていわれるような人たちが、北アルプスを歩きまわっていたのかもしれません。どんな人達だったのでしょうかね、非常に興味あります。その頃の黒部源流域にどんな人間が出入りしていたのかは、三俣山荘のオーナーである、伊藤正一さんの、「黒部の山賊」という名著に詳しく書かれています。以前は、三俣グループの小屋でしか手に入らなかったのですが、数年前に山と渓谷社から、出版され、アマゾンでも手に入るようになったので、ぜひ読んでみてください。

  高天原山荘は、厨房と従業員部屋の部分は増築してありますが、ほぼ50年前当時のままで、軽量鉄骨造の建物で、昔の姿のまま、立ち続けています。梁なんかはトラス構造になっているのですが、こういった部材を、まだヘリの無い時代に、大東新道を担いで運んだのでしょうか、トラスは現場で溶接したのですかね。どちらにしろ、大変なことです。50年間ほったらかしで、しかも、豪雪地帯にあるので、基礎も柱も歪み放題、おまけにここら辺は湿地帯で地盤がよくないですからね。その影響で、屋根が波打っているのが写真でもわかると思います。でも、この歪みっぷりが、逆に味となっているのです。お客さんも、「おお・・これは凄い・・噂通りだw・・」と満足して写真を撮って帰っていきます(笑)。改修であまり小奇麗になってしまうのも、逆にちょっと残念な気もします(笑)。

#追伸

*高天ヶ原山荘は2013年までに母屋の改修、厨房/従業員部屋の新築、バイオトイレの新設を終えて、新しく蘇りました。バックヤードにも大きなウッドデッキをつくって、お客さんも洗濯物を乾かしたりできるようになっています。厨房も広く綺麗になり、働く者にとっても、とても快適な小屋になりました。 >

■ 大きな小屋、小さな小屋

   高天ヶ原は、北アルプスの最深部とか、秘湯中の秘湯とか、登山口から最も遠い小屋なんて言われかたをしますけど、けっして、地理的にどん詰まりのような場所に位置しているわけではなく、意外と、交通の要だったりします。高天ヶ原を中心に、三俣山荘の岩苔乗越への道、薬師沢小屋へは、大東新道と雲の平経由の二本の道があるし、読売新道へと駆け上がる、温泉沢の登山道、今は廃道になってしまいましたが、奥黒部ヒュッテまで通っていた、旧高天原新道(今は竜晶池から先はわずかに痕跡があるだけ)もあり。小屋開け後は、これらの登山道整備に追われる日々となります。温泉の整備、脱衣場の組み立てや、岩苔小谷の橋架けもあり、これを小屋番さんと二人でこなさないといけないので、最初の2週間程は大忙しです。2010年は6月末に小屋に入ったのですが、最初のお客さんが来たのは7月の10日過ぎで、単独行の男性一人でした。それまでは、ずっと、昼間は外仕事、当時の小屋番の小池夫妻と三人で夕食後、九時頃まで毎晩晩酌しながら、いろいろな話を聞かせていただきました。今は小池夫妻も山小屋の仕事は引退されて、太郎平小屋の厨房を仕切っていた高橋さんが小屋番をしております。

   その後は、ぽつぽつと、お客さんも増え始めて、一番多かったのは、8月3日で、120人くらいだったかな、外仕事が終わってしまえば、あとはルーチンワーク。起床→朝食準備→清掃→お風呂(もち白濁硫黄系泉質の露天風呂!)→夕食の天ぷら用のあざみ取り→昼飯→売店・受付→夕飯準備→片付け→従業員夕食→翌日の準備→就寝といった繰り返しの毎日です。まあ、バイト同士でローテーションを組んで、山へ行ったりもできますけど、小さな小屋でバイトも少ないので、あまり休暇の融通は利かないかな?大きな小屋だと、チームに分けてローテーションできるので、休憩は比較的取りやすいのだけれど。でも、ここ6年ほど、小さな小屋で働いてみて、自分にはやはりこじんまりした小屋の方が向いてるなーと思います。なんといっても時間がゆっくり流れていますし、お客さんとの垣根が無いので、話もはずみますし、仕事してても楽しいですね。

 赤い屋根の小さな小屋、目の前にはお花一杯の大湿原にぽっかり浮かぶ水晶岳。夏の青い空に入道雲。まだ、雪解け水のような、冷たい清流に遊ぶイワナ達。ああ、夢のような日々(笑)

*大きな小屋には、写真家やら、雑誌、テレビ関係者など、山に関係する様々な人達がやってくるので、ありとあらゆる山に関する情報が集まりますので、それはそれで、楽しかったりするのですけどね。

2011年6月29日水曜日

第11回 山小屋への携行品(遊び道具編)


 今日の写真は、2009年に、黒部五郎小舎にいたときに、黒部川本流で釣った岩魚の写真です。小屋から、黒部川本流までは、特に危ないところもなく、ゴロー沢を下っていって、約一時間程度。ゴロー沢は数年前に鉄砲水があったとかで、流木が多くちょっと荒れた感じでしたけど、本流にぶつかる、ちょっと手前から魚影もちらほら見られました。


 黒部源流部での釣りというと、薬師沢小屋へ泊まって、目の前を流れる本流か、薬師沢でっていうのが、一般的です。フライロッドをザックの脇にさして登って来る釣り人の数はそれほどは多くはないですが、魚はすこしスレ気味ですかね。まあ、それでも、大物がばしばし釣れてしまうのが、黒部源流のすごいところなのですが。



 それに比べると、黒部五郎小舎近辺の黒部川源流部や、高天原山荘の近くを流れる岩苔小谷は、釣り人もまずこないですし、川を独り占めできます。魚影も濃いし、魚もスレていません。天気のいい日に、川の音につつまれながら、清流で過ごす一日は、まさに「日本の夏休み!」という感じで至福の時間です。黒部源流でイワナ釣りっていうと、なんかとても難しい感じがするかもしれませんが、これだけ魚が豊富で釣りやすい川も全国探してもまずないとおもいますので、興味がある方は、ぜひチャレンジしてみるといいですよ。問題は、たどり着ける脚力だけです。ただし、キャッチ&リリースは必ず守ってくださいね。ずっと、フライロッドを持って行っていたのですけど、昨年からよりシンプルにということで、テンカラ竿にしました。


  僕の場合、持っていく毛鉤はアント(蟻)と、ビートル(コガネムシ)、アダムスのパラシュートと、イブニングライズ用のホワイトウルフの4種類だけ。これで、十分釣りになります。サイズは14-16番でOKです。恐らく、これだけの高山で、小屋で働きながらフライフィッシングを楽しめるのは、黒部源流域だけじゃないかな?これも、僕が黒部から離れられない大きな理由の一つです。

 ■ 山小屋に持って行く物(遊び道具編)

  
   山小屋で一夏過ごす場合、たまの休暇や休み時間に何をするかというのは、人様々なのですが最繁期に近づいてきて忙しくなってくると、疲れもたまってきて、結局、休み時間もお昼寝(笑)な、感じになっちゃうのですが、僕はせっかく山に来てるのに、寝て過ごすのはもったいないなあ~っと思ってしまうタイプで、そのために、時間の空いた時用に遊び道具をいくつか持っていっています。それはなにかというと・・・
 

*釣り道具

   前述のように、黒部源流域は、格好の岩魚釣り場なので、フライロッドを持って行きます。フライの竿というのは、通常、持ち運びのために、2-3分割できるように作られているのですが、それでもそれなりの長さになります。薬師沢小屋のように、目の前が川ならそれでもいいのですが、川まで少し歩かないといけないような場合、サブザックに釣り道具一式と、お弁当を入れて、気軽に山道や沢を歩くのに、仕舞寸法の短くなるパックロッドやテンカラ竿が便利です。特にテンカラだと、持ち物はロッドとチペット(ハリス)、フロータント(ドライとジェル)、クリップ、フライボックスくらいでしょうか。ウエアは特に持っていかず、登山用タイツに短パン、足元は小屋においてある沢靴ですませてしまいます。昨年の装備はこんな感じです。

・今年の持ち物 釣具編

 *カメラ

  釣りや、登山にはいけない、ちょっとした休憩時間なんかは、もっぱらカメラをぶら下げて散歩をしています。もちろん、山も被写体ですけど、登山道脇の植物やら、よくよく観察すると、様々な被写体が見つかって、撮っていてとても楽しいです。だいたい一夏で5百枚位撮りためておいて、山から降りてから、じっくり整理。以前は山の写真のブログを運営してましたが、今はこちらにアップするくらいになってしまいました。ちょっと撮る写真の方向性も変わってしまったのかなあ。レンズは何本も持っていくわけにもいかないので、広角ズームと、マクロレンズ、望遠ズームの3本が基本。人を撮るのが好きな人は、大きな一眼よりも、コンパクトなタイプで写りに定評があるものを常にポケットにいれておいたほうが、シャッターチャンスを逃さないでいいかと思います。そうそう、頻繁に散歩をしてれば、雷鳥に出会う可能性もアップ。とくに、霧がでているときは、警戒心が薄れるのか、よく登山道に出てきます。しかし、今まではずっと、デジタルの一眼レフを持って行っていたのですが、2013年の高天原では、ニコンのミラーレス機とレンズ二本だけを持っていきました。これだと、機材の重量が一キロ程度で済みます。前述の一眼一式だと3キロ以上になるので、これも重量が3分の一程度で済みます。。でも、画質重視の場合はやはり、一眼をもっていきますね。さらに2014年は、富士フィルムのミラーレス一眼に、撮影機材はこんな感じになってます。


・撮影機材一新

*パソコン(iPad)

 前は、ノートパソコン(パナソニックのレッツノートRシリーズ)を持って行っていたのですが、べつに本格的にパソコンで作業しようというわけではなく、お休みだけど、外は雨・・・なんっていう時に音楽を聞いたり、映画を見たり、本や漫画をみたり、日記や思いついた仕事上のアイディアなんかを書き留めたりという使い方です。なので、最近はノートパソコンの代わりにタブレット端末を持っていくようになり、重量もノートパソコンの3分の一以下と軽量化。タブレットは電池が10時間くらいもつので、あまり頻繁に充電をしなくて済むのがいいです。ケースごとジプロックに入れてザックの背中のパッド部分のポケットにいれて持って行ってます。ここだと、金属のフレームが守ってくれるので、変な応力もかからなくて安心です。


  僕の場合はざっとこんな感じです。あと、だいたいどこの小屋にも大きめの本棚があって、バイトや、お客さんが読み終わって置いていった本が結構な冊数置いてあります。普段自分では読まないタイプの本も多く、のんびり読書三昧もまた楽しいものです。あと、変わったところでは、凧もってきて、凧上げしてるやつもいたっけな~。

2011年6月13日月曜日

第10回 山小屋への携行品(生活用品編)


 

このコラムもなんとか今回で10回目。


■ 荷揚げ


   そうそう、南アルプスの鳳凰小屋にはヘリコプターの荷揚げのお手伝いだけに行くこともあります。ヘリは、お天気がいまいちだと、天候回復を待って、待機が続き、フライトがずるずると延びてしまって、なかなか荷物が届かないことが山ではよくあります。とくに昨年は雨ばかりで、一週間もフライトが伸びて、兵糧攻めにあいましたw 霧がかかって視界が悪いと飛べないので、どこの小屋でも、荷揚げの当日はピリピリ緊張ムード、無線でヘリポートと視界の情報をやりとりしなら、ガスが切れた瞬間に一気に物資を運びます。普通は、小屋の近くの開けた場所に荷物を落としてもらい、バイトも総出で小屋の中に運びます。また、すぐ次の便が飛んでくるので、大忙しです。

 そういえば、数年前に、どこかの山域で、荷物をかけるフックがちゃんと締まっていなくて、荷物を間違って落下させたとかで、荷物の脱着の方法が少し変わり、簡単な講習を受けたことがあったっけ。

 下の写真は高天ヶ原山荘でのヘリの荷揚げの様子。緊張して待っていると、パタパタパタっと、ヘリがやってきて、小屋前の小さなデッキに荷物を落していきます。たいてい一発では終わらないので、急いで荷物をほどき小屋の中へ運び込んでいたのですが、2年前から小屋裏に大きなスペースができ、そこに5発くらいは落としていけるので、あとでのんびり運べるため、だいぶ楽になりました。

■ 小屋への携行品について

 前回の続きです、小屋へ持っていく物についてすこし説明をしようと思います。小屋によっては、持ち物チェックリストみたいなのを送ってくるところもありますが、電話で「ヘッドランプと雨具だけは忘れないでくださいねーっ」と、言われるだけのところもあるので、簡単に説明しておきましょう。といっても、着替えや、洗面用品等は、普通の旅行とかわらないので、各自、必要な物を必要な量持っていけばいいと思います。たいていどこの小屋にも、お風呂に入れるのは週2回程度です(高天ヶ原は毎日ですがw)。洗濯はできても、やはり週2-3回くらいですので、アンダーウエア等の基本的な着替えとしては、3セットくらいは必要となります。上に着るものは、2セットでも、かわりばんこに選択すれば、なんとかやりくりできるかな。乾燥室が使えればいいのですが、そうでないと、お天気が悪いとなかなか洗濯物も乾いてくれないので、登山用品の速乾性のある物で揃えていくといいと思います。その他、必需品というと・・・


*ヘッドランプ:

 朝は暗いうちから働きだすので、これなしでは、仕事になりません、必需品です。最近は蓄電池に充電しておいて、厨房だけは朝から、電気照明がつくところも多いですが、倉庫に材料をとりにいったり、やはり手元が暗かったりするので、どうしても必要になります。安物はスイッチがすぐ壊れたりするので、それなりの物を買っておいたほうがいいかと思います。下界でも災害時にも使えますし、登山でも、必ず持っていくものなので、いいものを買っておきましょう。今だと、PETZLかBlackdiamondのものを使ってる人が多いかな。電池は意外とすぐなくなります。僕なんかは、寝る前に本を読んでいて、点けたままにして寝てしまって、朝に電池きれてたり(笑)。一週間に電池ワンセットくらいのつもりで準備していくと安心です。でも、最近は電池は単4のエネループを3セットと充電器を持って行っています。男性はひげそり用の充電池も必要ですね。


*充電器具:

 携帯は小屋での目覚まし時計がわりでもあるので、そのための充電器具も必要となります。私の場合は、目覚ましには、タブレット端末を使っていますので、その充電器と、カメラの電池用の充電器を持っていっています。それと上記のエネループ用充電器。あと、小屋はコンセントの数が少ないうえに、みんなが充電しますので、コンセントの口が三つ付いた延長コードも持って行っています。一人でコンセントを独占してしまっては申し訳ないですからね。他の人にも喜ばれますし。

*エプロン&頭巾:

 厨房に入るときはエプロンと頭巾が必須。保健所の人もチェックに来たりします。たいてい小屋に昔のがたくさん残っていて、すきなの使っていいよと言われますけど、デザイン的にこだわる人は、自分で用意していったほうがいいでしょう。ちなみに、太郎平グループの小屋は、タイアップしているマムートのエプロンで、おそろいです。

*サンダル:

   室内履き用のサンダルも必需品。厨房の床は濡れてますし、山小屋は足元から冷えてきますので、靴下やスリッパでの生活はできません。掃除の時など、畳の部屋では脱いで作業しますから、着脱のしやすいものが使いやすいです。私はアディダスのウオーターモカシンをサンダル代わりに持って行っています。サンダルよりも動きが軽快になるので、脱ぎやすいシューズタイプもお勧めです。つっかけのサンダルでは重い物とか運びにくいですしね。

*防寒具:

   前にも書いたけど、普段はフリースくらいで十分なのですが、たまに冷え込んだ時や、夜に外で宴会をしたり、流れ星を眺めたりする時のために、薄手のダウンもあると快適に過ごせます。ダウンや化繊のベストも、厨房仕事で、料理や洗い物をするときに袖を濡らすこともなく、使い勝手がよいです。夏といっても、標高の高いところは夜は氷点下ちかくまで気温が下がりますので、要注意です。足も冷えるので、ウールのしっかりした靴下がよいですよ。

   といった感じでしょうか。ほかにも気づいたことがあったら、順次書き加える予定です。あれもこれもと思っても、意外と山では使わないもので、一ヶ月なんかあっという間なので、荷物は割りきって、コンパクトにまとめるのが吉です。あ、そうそう衣類に関しては今年の私の持ち物も参考になさってください。)
・今年の持ち物 衣類編


   今日の写真は、鳳凰小屋の炬燵で、みんなでまったりとしているところ。このときの荷揚げでは、待機が長かったせいもあって、毎晩飲み過ぎてしまって、荷物運びがきつかった(笑)これは、そろそろ若い人におまかせですね そうそう、この年(2011年)は下山してすぐの、6/6に池袋の豊島公会堂で、山岳映画の上映会があって、鳳凰小屋に関する記録映画もその一つとして上映されました。前年に一年かけて撮っていたらしく、興味深く見させていただきました。オーナーの細田さんもやってきて、舞台挨拶していました。なんでも、山岳映画サロンという、アマチュア映像作家の団体だそうで、毎年、上映会を開いているらしい。公会堂がほぼ一杯になる盛況ぶり、来年も行ってみようとおもう。しかし、製作者が「モデル」と呼んでいたいわゆる女性出演者がこぞってただのおばちゃまだったのにはちょっと苦笑い。まあ、会場を見渡せば、納得な年齢層だったのですけど。

2011年5月14日土曜日

第9回 山小屋への携行品(登山装備編)



今日の写真は、小屋開けのために、GWに鳳凰小屋に小屋入りした翌日の凍りついた窓ガラス。この朝はとても気温が低く、-6度しかありませんでした。御覧のように窓に綺麗な結晶が。鳳凰小屋とはもう長いお付き合いになるのですが、最近は仕事の都合で、小屋開けのお手伝いに行けなくて残念です。今までに5回小屋開けの手伝にいったかな。

  GWだけのバイトを募集している鳳凰小屋みたいなところは少なく、たいていは小屋番さんと、その年の長期のスタッフで小屋開けをします。鳳凰小屋は、一階の談話室に薪をくべる炬燵があって、オーナーの細田さんが、ゴミと一緒に燃やしている薪を常に補充しているので、いつもぽっかぽかの状態。なにせ他に暖房が一切ないので、この炬燵にみんなが暖まりに来ます。そして毎晩大宴会に・・・

 実は、この部屋、オーナーはじめ、スタッフの寝室も兼ねていたりするので、あまり連日盛り上がると、逆にスタッフは疲れがたまって来たりします(笑)でも、こういうスタッフもお客さんも一緒になって話ができる空間って、他の山小屋ではないので、鳳凰小屋の一番の特色になっています。山小屋のお客さんは年齢的にはだいたい60代の方が一番多いのですが、この団塊の世代が山にこれない年齢になってしまうと、だいぶお客さん減ってしまうのかな。

それでも一時期の山ガールブームで若い人もだいぶ増えてきているので、山小屋の客層も、あと数年すると、だいぶ変わるかもしれないですね。テント泊の登山者は、どこも年々増えていて、最近は小屋泊まりのお客と数が逆転することもシーズン中何回かあったりします。かくゆう私も個人での山行きは、テント泊が多いのですが・・・

 ■ 小屋入りの際の装備

  GWの鳳凰小屋のような雪の多い時期に入山する場合は、アイゼン、ピッケルは必携ですし、靴もそれなりの物じゃないといけませんが、夏の短期、中期のバイトなら通常の縦走登山用の装備で十分だと思います。

 *登山靴

  靴は、ゴアテックス・ブーティーの防水性のある一般的な登山靴なら、特に問題ないと思います。靴に関しては、一旦小屋入りしてしまえば、普段は外では長靴で作業&生活することになりますので、小屋でどうこうより、バイトの後、縦走して歩いたりするなら、そのコースに合わせた靴を選べばいいかと思います。最近はトレールランニング用の靴も進化していますから、無理に重い、ごっつい登山靴を選ばなくてもいいかと思います。僕はここ数年はトレールランニング用のミドルカットの靴を使っています。ただソールがちょっと柔らかいぶん、あまり重いザックを背負うと足元がちょっと安定しにくいです。なので、荷物は極力軽くするようにしています。最近は登山客の縦走のスタイルも変わってきて、テント装備でも、足元はトレランシューズっていう若い人も多くなりました。個人的には装備が15キロ前後までなら、トレランシューズでOKかと思っています。

で、先程話した、作業用の長靴のことなのですが、履きなれるとこれが非常にに歩きやすく、例えば、太郎平小屋から折立へ下山するのにも、長靴とごつい登山靴を比べると、長靴のほうがタイムを短縮できたりします(あくまで、履き慣れてていて、足の裏が強くなっていればの話ですが・・・)。底が柔らかいので滑りやすい岩や木の根っ子なんかにもがっちりグリップしますし、山での生活には欠かせないアイテムです。この便利な長靴、たいていは、小屋に古いのがいくつかあって、これを使わせてもらうのですが、サイズが限られるので、荷物に余裕があれば、マイ長靴を持っていくというのもありだと思います。日本野鳥の会のオリジナル長靴なんかは、小さくおりたたみもできて、デザインもおしゃれでいいですよ。あ、それと長靴はゴム素材なので、多少サイズが合わなくてもはけてしまうのですが、これがかえって危険で、サイズの小さいものを無理して履いていると、足の爪が壊死してしまいます。僕もこれで二回ほど、足の親指の爪をはがしていますので、サイズには要注意です。

 *雨具

  これも、ゴアテックスの雨具が定番です。普段つかっている物があればそれで結構なのですが、男性スタッフは雨の中での登山道整備等、外仕事がありますので、高級なゴアテックスハードシェルだけしかなかったりすると、作業でボロボロになる可能性もあるので、そこらへんを考慮して、別に安い物や、使い古しの雨具などを持っていくといいと思います。モンベルの一番安いやつとかで十分です。作業用ということなら、ワークマンとかの安い物でもいいかと。小屋の人は、たいてい、古くなってボロボロになった雨具を作業用にしています。あと、ゴアテックスのスパッツもあったほうがいいでしょう。個人的には、雨具のフードをかぶるのが好きではない(音がきこえないし、なんとなく窮屈)ので、ゴアテックスの帽子も必ず持っていきます。これは銘柄的にはアウトドア・リサーチの物がつばが広くて、使いやすくてお勧めです。雨の日に下山・・・なんってこともあるし、小屋回りでも雨の日に使えるので、登山用の軽い雨傘があっても便利です。下山日が雨だったりすると街中をカッパ着て歩くことになりますしね。

 *ザック

荷物の量は人によってそれぞれですが、だいたいみんな、60-70リットル位のザックで来ています。はっきりいって、山での1ー2ヶ月なんて、あっという間なので、あまり余計な物は持っていかないのが一番です。なので、50リットルくらいのザックで済ませたいところなのですが、どうしても、こだわりたい物(カメラやタブレットとか)で、ついつい大荷物になってしまいます。私は最近は、グレゴリーの70リットルのザックをつかっていますが、結構すかすか状態で使ってます。だんだん、小屋生活に、どうしても必要な物がわかってくるので、年々、荷物はコンパクトになってきています。昔は75リットルのザックがぱんぱんな状態でした。もし、新調するなら、ザックと登山靴だけは専門メーカーの物を買うことをお勧めします。専門メーカーというのは、ザックなら、ザックだけを、デザイン&製造しているところ(グレゴリーとか、オスプレーなど・・・)です。一番体にダイレクトに接して、負荷のかかる道具ですから、しっかりしたものを選びましょう。個人的にはグレゴリーのザックが一番背負いやすいのですが。こればっかりは体型にもよるので、実際にお店にいって背負ってみないとわかりませんね。

 ■ちょっと裏技

 初めての小屋では難しいかもしれませんが、カメラなんかも一眼レフ&交換レンズ一式となると、それだけでかなりの重さになります。他にも、人によっては、嗜好品のタバコとかお酒なんかも、かさばりますね。この手の物は、小屋によっては、ヘリの荷揚げの時に一緒に上げてくれることがあります。小屋入りの前に、事務所にダンボールで送っておき、ヘリコプターで荷揚げする際に、一緒にあげてもらうという方法です。何度もバイトに来ている常連さんなんかは、わざわざ担いで上がらないで、こうしている人が多いです。小屋というか、オーナーさんによって、段ボール一個だけならOKとか、お酒はダメとか、事情が違うので、事前に問い合わせてみるといいです。といっても、小屋入りから、最初のヘリの荷揚げまでの期間に使いたい物はやはり担いでいくことになります。そうそう、北アルプスの小屋では、系列にもよりますが、たとえば、太郎グループだと、夕食時に、ビールでも、酎ハイでも、炭酸飲料でも、お菓子でもなにか一品、好きな物を選べます。


あと、従業員用のお菓子をダンボールでまとめてあげている小屋もありますし、ここらへんも気になるなら事前に問い合わせてみるといいでしょう。 

2011年4月24日日曜日

行ってきます

 さてさて、火曜日から、南アルプスの鳳凰小屋の小屋開けに行ってきます。今年で4回目、足掛け五年になります。GWだけなんで、期間は短いのですが、それでも、今年は5/8までなので、二週間近くになります。帰ってきたら、ご報告いたします。

五月からは、山小屋で働く際に持っていくもの等を整理してみましょう。それでは、行ってきます。

2011年4月11日月曜日

第8回 山小屋の仕事(3)(受付編)


■ 行く山小屋は決まりましたか?

 山小屋のバイトの募集は、早いところは年明けくらいから始まります。たいてい小屋開けはGWですから、それまでには、長期のアルバイトは決めておかないと小屋としても困ってしまいます。中期のバイトも、6月下旬には小屋入りしてもらって、最繁期までに仕事に慣れてもらわないといけません。短期のバイトは結構直前、場合によってはシーズン中も募集していることもあります。通常は、まず、電話でコンタクトをすると、登山や山小屋の仕事の経験の有無、働きたい期間等を聞かれ、履歴書を送付。採用だと、その旨連絡が入り、その後、契約書が送られてくるので、サイン&捺印して、返送。これで、正式に採用となります。入山までは、持っていく物の準備するのと、前にも書いたけれど、今まで登山を全くしたことないっていう人は、近場の山でちょっと足慣らししておいたほうがいいかもしれません。7月から山小屋に行くなら、5-6月と月に1-2回くらいは歩いておいたほうがいいかな、靴が合っているかのチェックもできるし。だいたい、アルプスの稜線ちかくの小屋だと、登山口から、1000メートルくらいの標高を登ることになるので、東京近辺だったら、奥多摩か、丹沢あたりの日帰り登山で鍛えとけば問題ありません。

■ 受付の仕事とは?

 登山道整備の仕事、厨房の仕事と書いてきたので、もう一つ、受付業務についても簡単に説明しておきます。といっても、初めて行く小屋で受付の仕事をすることはまずないと思いますが、小さい小屋だと、人手が足りないときに、ちょこちょこと、しなければいけなくなる時もあるかとおもいます。でも、山小屋の受付っていうのは結構、デリケートな面もあるので、ある程度慣れた人でないと、何かとトラブルの元になることがあります。

 業務的には、来たお客さんに、宿泊カードを記入してもらい、食事の内容や翌日の弁当の有無なんか聞いて、宿泊料をいただきます。それから、寝る場所を決めてあげて、そこまで案内。その際に、トイレや乾燥室等の諸施設の場所や利用の仕方なんかを説明します。食事や弁当の数は常に変化しますので、間違いがないように随時厨房に連絡を入れます。最後に、すべてを集計し、帳簿に記入します。これを、併設された売店をさばきながらするので、最繁期はトイレにもいけないくらい忙しくなります。お客も様々で、難しい注文をする人もいますし、ツアーの添乗員さんとかだと、いわばお得意さんになるので、寝る場所などは、特別に配慮しないといけません。それでも、お客さんの少ない時は適当に世間話もできますし、いいのですが、最盛期に布団2枚に3人寝てください・・とか、さらには、布団1枚に2人でお願いしますとかいう、厳しい混雑状況になってくると、大きな小屋では、受付前に、大行列ができますし、結構なプレッシャーが、かかります(笑)

 こういう状況だと、お客さんもなかなか小屋に入れず、イライラしてきますし、従業員の側も応対にいっぱいいっぱいで、ちょっとしたことで、言葉や気遣いが足りずに、お客さんを怒らせてしまうこともあります。よくあるのは、予約を大幅に上まるお客さんが来た時。最初、1人に布団1枚で案内していたのが、場所が足りなくなり、途中から2枚に3人で寝てもらうように案内を変えたりすると 「あっちの部屋では1人に1枚に布団があるのに、待遇が違うじゃないか!」とか、「3人で2つの毛布って、真ん中の人はどうやって布団かけるんだよ!」とか、ごもっともなクレームをつけられてしまいます(笑)。でも、高天ヶ原くらい山奥になるとw さすがに皆さんわかっている人しかこないので、何があっても、皆さんニコニコしています。いいお客様ばかりで、大変助かっていますw

 なので、予約数と曜日、時期、お天気等から、今日はたくさん来そうだなと思ったら、最初から、タイトに押し込んでしまうとか、一番多い男性の単独のお客さんは、大部屋にぎっしり詰め込んでしまうとか、部屋割りのコツはいくつかあるのですけど、これも、ある程度の慣れが必要となります。あと、登山道の状況や、次の目的地までの所用時間等はよく聞かれるので、周辺をある程度歩いたことのある人でないと、的確にアドバイスできないばかりか、危険でもあります。特に、沢添いのルートはお天気に左右されるので、注意が必要です。ここら辺は、黒部源流部では、小屋間の無線で、常時連絡を取り合って、リアルタイムに登山客に情報を提供できるシステムが出来上がっています。

 とはいえ、厨房の仕事と違って、実際に様々なお客さんと接し、話もできますので、私のように、話好きなタイプの人は、楽しく働けるポジションだと思います。まあ、たまに嫌な目にもあうこともあるけれど、その何十倍も楽しいこと、嬉しいことがありますから。私の場合は、黒部源流域で、あちこちの小屋で働いているので、お客さんが覚えていてくれて、「あれ?前に、あそこの小屋にいましたよね?」と、聞かれることも結構あります。意外とみなさん、覚えていてくれんですよね。こちらは、大勢のお客さんの相手をするので、余程、特徴のあるお客さんじゃないと、顔まで記憶に残らないのですが、普通のお客さんは、山小屋に泊まる、しかも北アルプスの最深部にっていうのは、ある意味特別なことなので、こちらのことをじっくり観察しています(笑) なので、身振り、言動には常に気をつかわないといけません。

 そういえば、太郎平小屋で、キャンプ場の管理をしていたときに、登山口に駐車した車にサイフを忘れてきてしまった若いご夫婦がいて、せっかく登ってきたのに受け付け出来ないとも言えないし・・・、結局、下山してからの代金を振込んでもらうことにして、滞在してもらったことがありました。後日、代金の振り込みはもちろんのこと、箱詰めのクッキーまでお礼にということで送っていただいたりしました。でも、私が下山しているときに届いたので、山小屋に戻った時には、全て食べられてしまっていました(笑)

■ 今日の写真


 今日の写真は、高天ヶ原のトンボ。なんでも、ここらへんは、珍しいトンボが生息しているらしく、マニアにはたまらない所らしいです。虫好きの人って、山にも結構いるんですよね。南アルプスの鳳凰小屋のご主人、細田さんも、大の虫マニア。なんでも、自分で発見した新種の昆虫がいくつもあって、ホソダなんとかっていう学名までついているらしい。後世に名を残したいなら、虫屋になるのが一番の早道かもしれません(笑)

2011年3月22日火曜日

第7回  山小屋の仕事(2)(厨房編)


■ 厨房の仕事ってたいへん?

 山小屋での仕事で、一番手間ひまかかるのは、やはり、食事の準備になるでしょうか。なにせ、数十から、多い時は、小屋の規模によっては数百人分の食事を用意しないといけないのですから、食器、プレートを並べて盛り付けするだけでも大変なことです。たとえば高天ヶ原山荘のような小さな小屋だと、食堂の定員は24名、ここで、100人が食事をとるとなると、最低、5回は入れ替えないといけません。伝えた食事の時間通りにこない人やら、暗くなってから小屋に到着する人、温泉に行ったきりもどってこない人w・・・等、予定通りにはいかないですから、実際は5回+αの入れ替えとなります。食器の数は50セットしかないので、下げたものを再度洗って、さらに盛り付けて、また配膳して・・っと、これの繰り返しになります。さらに、お弁当も作らなくては・・っと、最盛期の厨房は、実に大忙しです。気がつくと、もう、消灯時間・・・。そして、暗い中、厨房で夕食なんてことも・・・。そんなことも、小さな小屋では、ワンシーズンに何回かあります。逆に、大きな小屋だと、数百人分の食事を用意しないといけないのですけど、その分バイトの数も多いですし、効率よく分業体制ができてますので、そこまで遅くなることはないのです。どちらがいいかは、一概にはいえないのですけどね。

 食事の内容は、各小屋の厨房の担当者が考えて、毎年ちょっとずつ手を加えていくので、担当者が変わると内容もがらっと変わったりするのですが、その小屋の長年の定番メニューってものはあります。たとえば、北アルプスの双六小屋や黒部五郎は昔から夕食のメインは天ぷらで有名ですし、南アルプスの鳳凰小屋のおかわり自由のカレーライスも、ずっと定番です。ここ6年ほど、通っている、高天原山荘も、昔から夕食は、天ぷらが名物、だったのですが・・・5年前に小屋番さんがかわり、今はチーズハムカツがメイン。私は、いつも高天では揚げ物担当です。天ぷらや揚げ物は目が離せないので、お客さんの多いときは、ず~~と、天ぷら鍋の前に張り付いています(笑)、一昨年は厨房の建て替えで、臨時の小さな厨房での作業だったので、大変でした。その厨房も、昨年ピッカピカに新しく、大きくなって、最高の作業環境になっています。双六グループの小屋はどこも厨房が広くて作業しやすかったなあ。

 小屋の厨房での仕事は、たいてい、料理品目ごとの担当制になることが多いです。たとえば、ご飯とみそ汁は長期バイトのK君、天ぷらはJ君専任、煮物は女性のNさん、といったように、各自の仕事を割り振られるか、得手不得手で自然と分業になりますから、それをこなしつつ、大変な人がいれば、手伝ってあげつつ、手が空いた人から、盛り付け、配膳、お弁当つくり、洗い場にまわるといった感じです。メニューは普通、2種類考えてあり、一日おきに変える小屋もありますし、連泊のお客さんがいる時だけ、別メニューにする場合もあります。さすがに山小屋に三連泊する人はめったにいないので、2パターン用意すれば、たいていはそれでなんとかなるのです。たとえば、ことしの私は高天ヶ原山荘の厨房で何をつくっていたかというと、キャベツの千切り/チーズハムカツレツ/菜の花のおひたし/アンチョビのパスタです。それと連泊のお客様にだす天ぷらも揚げていました。でも、料理は楽しいので、苦にはならないかな。


 
■ アルバイトは何を食べるの?


 従食っていう言葉をきいたことありますか? 従業員の食事のことを、山小屋では、従食とよびます。いわゆる、まかないというやつです。お客さんに出す料理は、遅くなってから小屋に到着する登山客もいるので、少し多めに用意するので、普通は余りがでますので、基本的にはこれをいただくことになります。でも、さすがに、毎日同じものでは飽きてしまいます・・・なので、日替わりで担当を決めたりして交代で、何か1~2品付け加えたり、常連のお客様や遊びにきた元アルバイトの方々がおみやげに持ってきてくれたものをいただいたりという感じです。たとえば、登山口に近い、太郎平小屋とかですと、富山から登って来る人が多いですから、豊富な海の幸(昆布〆とかイカ墨とか・・)を差し入れに持ってきてくださる方々がたくさん登ってきます。まだ、お客さんの少ない時期などは、食堂でお客さんと、同じ時間に食事になったりしますが、従業員の食事のほうが、ずっと豪華だったりすることもたまにあります(笑)。まあ、お客さんの前で、お客さんより豪華なものを食べてはダメ!っという小屋番さんもいるし、たしかにちょっと気まずいのですが。ここ数年、高天ヶ原山荘は工事続きで、常に職人さんが、多い時は10人近くいたので、そちらの食事も用意しなくてはいけないので、ちょっと大変でした。その工事も一昨年に完了し、綺麗な厨房と、バイオトイレのおかげで大変快適な小屋に生まれ変わりました。
 
 そんなわけで、必ず従食用に、一品何か作ってくれない?っていわれると思いますから、時間がかからず、どの小屋にもある食材だけで、ささっと料理できるものをを2ー3種類練習しておくことを、お薦めします。食材は、小屋によってあるものがまちまちなので難しいのですが、大抵のものはあります。ただ、発電機を使わない小屋ですと、冷蔵庫がないですから、肉はハムやベーコンくらいしかなかったりしますので、限られた食材で、素早く、美味しく工夫して料理できる人が喜ばれます。あ、あと、お菓子(ケーキとかクッキーとか)やパンとか作れたりすると、ポイント高いです~。どの小屋にもケーキミックスくらいは置いてあるはず。ちなみに、下の写真は高天が原山荘で前日の夕食で余ったチーズハムカツを利用して作ったカツ丼です。こんなんだと、ネギと出汁つゆ、とき卵で、10分でできちゃいます。簡単でおいしいんです。

■ 山小屋のお風呂について


 最後に山小屋のお風呂について、話しておきましょう。高天ヶ原山荘には、小屋から歩いて15分くらいのところに、天然温泉の露天風呂があって、アルバイトも毎日入れますが、これはありえないくらい恵まれた例です。普通、どこの山小屋にも従業員用のお風呂はありますが、たいていは、厨房の裏手とか、または小屋の裏に別棟になっていたりします。ユニットバスをヘリコプターで上げて使っていたり、シャワーだけだったり、薬師沢小屋などは、以前は、五右衛門風呂を薪で沸かせていました。そこらへんは、小屋ごとに様々です。しかし、水を天水(雨水)だけで、やりくりしている稜線の小屋などは、その貴重な天水を沸かして、オケに入れて、タオルで、体を拭くだけっていう所もあるので、そこらへんが気になる人は事前にチェックしておいたほうがいいかもしれません。ちなみに私は、お風呂なしの小屋で働いたことはないのですが・・・結構きついかもw 普通は、一週間に2-3回程度、お風呂の日があって、順番に手のあいた人から入っていきます。高山は基本的に乾燥しているし、涼しいので、汗もさほどかかないのですが、さすがに3日もすると頭が痒くて我慢できなくなってきます(笑)。石鹸やシャンプーは小屋にありますので、持って行かなくても大丈夫ですよ。

 山小屋での生活は、他人との共同生活ですし、常にお客さんの視線もありますから、特に神経質な人でなくとも、気が休まらない部分もあるかもしれません。風呂は、そんな中一人で、ほっと一息つける貴重な時間でもあります。下の写真は高天ヶ原の露天風呂。源泉と、川の水を混ぜてホースでひっぱってきてるんですけど、その混ぜかげんで温泉の温度を調整するのも大切な仕事のひとつなんです。なにせ皆さん、このお風呂が目当てでやってくるのですから。